< 最初に > 2019.夏
中学生の頃にサボテン栽培を始めたが進学で離郷し、30歳で家業を継ぐために帰郷。この頃(1980年)より蒐集を再開しましたが、技術は未だに普通レベルです。そんな趣味家が書いていますので参考程度にして下さい。
Turbinicarpus は長期高温乾燥(1-2ヶ月、40-50度以上で用土乾燥) は苦手です。勿論、低温多湿(成長がハッキリ止る温度での頻繁な水遣り)はもっとダメージを受けます。 好みの環境は「草いきれ状態」で
場所は 岩の割れ目の様な狭い所です。具体的には、かなり密集した寄席植えすると機嫌が良くなります。 大苗になった場合は小中苗より水分の必要量が少なく、水捌けのよい用土を好みます。最大寸法になった苗の植え替えはかなり危険で、7月〜9月は難しいと思います。また植え替え直後から根が出るまでの1−2週間は新聞紙等を被せて体力消耗を防がないと原因不明な(自律神経失調的)腐り方をします。
接木は比較的簡単に標本球を作れますが自根で育てた苗とは印象がかなり違います。お好きな方で作れば良いと思いますが、両方の栽培難易度は苗の生涯を通じれば、同じような気がします。Turbinicarpus
の栽培寿命は他の属より短く平均で 20年程度かなぁと思っています。大きな苗は油断するとオクサレ様になるので10年も栽培すると次世代へ繋ぐ実生が必要になると思います。
<学名、和名>
私は趣味家なので学名や和名は「変異が一定の範囲内である特徴を持っているサボテン達」を特定するための符牒のようなものと考えています。ですから 同じ顔(系統)の苗を再度入手できるようにカタログ番号やフィールドナンバー(field
number)を記録するように努めております。これにより同じような顔の植物が再入手出来ればどんな名前でも問題ないと考えています。
また 学名(アルファベットで表される名)と和名(日本語の通称名)は一対一で完全に一致するものではないと考えています。例えば 昇雲竜の学名は Turbinicarpus
klinkerianus ですが Turbinicarpus klinkerianus は昇雲竜とは限りません。
<ツルビニカルプスについて>
Genus Turbinicarpus ツルビニカルプス属は昇竜丸が基本種として定義され数種類が仲間でありましたが、いつの間にかGymnocactus、精巧殿、薔薇丸
等が仲間入りし 多くの新品種が参加し大所帯となっています。 ここでは私の好きな狭義の品種について思うところを述べたいと思います。
<狭義のTurbinicarpus>
Turbinicarpus schmiedickeanus Boed. 1928 昇竜丸
Turbinicarpus macrochele Buxb. & Backeb. 1931 牙城丸
Turbinicarpus pseudomacrochele Buxb. & Backeb. 1937 長城丸
Turbinicarpus lophophoroides (Werderm.) Buxb. & Backeb. 1937
(女交)麗丸
Turbinicarpus schwarzii Shurly 1948 烏城丸
Turbinicarpus klinkerianus Backeb. & H.Jacobsen 1948 クリンケリアナス(昇雲竜)
Turbinicarpus polaskii Backeb. 1961 ポラスキー
Turbinicarpus gracilis Glass R.A.Foster 1976 グラシリス
Turbinicarpus krainzianus ??? 1977 蕪城丸 <-- 謎の分類?
Turbinicarpus flaviflorus Bravo-Hollis,Sanchez Mejorada 1978 フラビフロルス
Turbinicarpus dickisoniae Glass and Foster 1982 デキソニアエ
Turbinicarpus swobodae L. Diers 1987 サボダエ
Turbinicarpus minimus (G.Frank) Diers 1990 ミニマ
Turbinicarpus hoferi Luthy &amp; A.B.Lau 1991 フォフェリィ
Turbinicarpus bonatzii G. Frank 1992 ボナッヅィ
Turbinicarpus rioverdensis G.Frank 1992 リオベルデンシス
Turbinicarpus jauernigii G.Frank 1993 ハウエルニギィ(アウエルニギィ)
Turbinicarpus rubriflorus G.Frank 1993 ルブリフロルス
Turbinicarpus alonsoi Glass &amp; Arias 1996 アロンソィ
Turbinicarpus andersonii Jan Riha, 1996 アンダーソニー (= panarottoi)
Turbinicarpus lausseri (Diers &amp; G.Frank) Glass 1997 ラウセリ (=
spacellatus)
Turbinicarpus graminispinus G.F. Matuszewski, V. Mysak &amp; Z. Jiruse, 2010 グラミニスピナ
Turbinicarpus nikolae Snicer, Mysak, Zachar & Jiruse. 2015 ニコラエ
<自然交配種>
Turbinicarpus pulcherrimus プルゥチェリマス (精巧殿変種 jarmilae×クリンケリアナス.)
Turbinicarpus mombergeri モンベルゲィ (ラウイ×精巧殿)
<広義の追加種類>
精巧殿
薔薇丸
Gymnocactusの仲間達;
Turbinicarpus beguinii (Taylor) Mosco & Zanlvello 白狼玉
Turbinicarpus booleanus Hinton ブーリアナス
Turbinicarpus gautii
Turbinicarpus gielsdorfianus (Werdermann) John & Riha 黒槍丸
Turbinicarpus horripilus (Lemaire) John & Riha 紅梅殿
Turbinicarpus horripilus ssp. wrobelianus
Turbinicarpus knuthianus (Boedeker) John & Riha 薫染丸
Turbinicarpus laui Glass & Foster ラウイ
Turbinicarpus mandragora (Fric ex Berger) Zimmerman 美針玉
Turbinicarpus roseiflorus Backbg. ロゼイフロラ
Turbinicarpus saueri (Boedeker) John & Riha 仙境
Turbinicarpus saueri ssp. nelissae ネリッサエ
Turbinicarpus saueri ssp. gonzalezii
Turbinicarpus saueri ssp. verduzcoi
Turbinicarpus saueri ssp. septentrionalis
Turbinicarpus saueri ssp. nieblae
Turbinicarpus subterraneus (Backbg.) Zimmerman サブテラネア
Turbinicarpus viereckii (Werdermann) John & Riha ヴィーレッキィ
Turbinicarpus viereckii var major (Gl. & F.) John & Riha マジョール メイジャー (薫鯱?)
Turbinicarpus viereckii var neglectus
Turbinicarpus ysabelae (Schlange) John & Riha イザベラエ
Turbinicarpus ysabelae var brevispina (Schlange) John & Riha
Turbinicarpus zaragozae (Gl. & F.) Glass & Hofer ザラゴナエ
Turbinicarpus sp. 白鯱
Turbinicarpus sp. 薫鯱
<蛇足>
1.1990年以前の国内市販の蕪城丸は柔らか細刺だったが、その後の蕪城丸の刺は以前より短くて太く感じる。
2.共生園@岡山で売っていた薫鯱は黒長刺と洋紅色花の美しい苗だけど学名は不明だった。この苗とviereckii var major は良く似ている。
またroseiflorusは柔らか刺の勲鯱みたいに見える。共生園の勲鯱は徳島二軒屋の輸入業者より買ったと園主より聞いた記憶がある。
3.1990年頃まではknuthianus(薫染丸)は細めの刺で柔らかい感じだったが、輸入種子のknuthianusは昔の白鯱タイプのように太刺になっている。
4.私は 牙城丸 <--> ポラスキー <--> 烏城丸 の判別を確定できません。
klinkerianus群(含む昇竜丸)
学者によれば昇竜丸(schmiedickeanus)が基本でklinkerianusが家来的な扱いを受けるのでしょうが、私的にはklinkerianusが昇竜丸の変種扱いされることには同意し難いので独立種扱いにします。どちらかと言えば顔の変異幅や原産地の分布範囲からKlinkerianusを主軸に述べたいと思います。
昇竜丸は古くから栽培されていましたが、シャボテン誌95号(1977年)に昇雲竜(klinkerianusの優美型)が写真掲載されてから少しずつ
klinkerianusが普及し始めました。また1997年頃には昇竜丸とklinkerianusの中間的な花を持つ andersonii (=
panarottoi) が導入され珍しがられました。
私は klinkerianus complex (複合集団)がお気に入りです。1982年頃から種子と苗の購入を繰り返してきました。その中で感じたことを少し書いてみます。
実生をされた方は分かると思いますが、発芽直後の実生苗の刺には羽毛状の毛羽があります。その後に成長するとコルク質の刺を発達させますが、これに水をかけると刺色が黒色になる特徴があります。コルク状の刺は長短太細いろいろな変異があります。
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烏城丸群: こちらはコルク質の刺に水を付けると茶色系になります。klinkerianus群よりは長刺です。
これらの仲間にポラスキー(polaskii)なる実体のハッキリしない種がありますが、海外の分類では牙城丸の仲間扱いが多いようです。業者に注文すると顔は様々ですが、日本の業者では1本(前後)刺の烏城丸であることが多いです。
1997年頃にChrista's Cactus より赤花烏城丸(var. rubriflora)が導入されました。この種と烏城丸SB756は見分けがつかないレベルで似ています。また
Kohres1811 var. Guadalcasal も花弁中央にマゼンタ色の筋が有ります。
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Piltz2589 var. sp Matehuala |
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var. rubriflora (Christas cactus) |
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(謎の)ポラスキー達
大部分の苗は一本刺ですが同定の決定的理由にはならないようです。いろいろな業者より購入しましたが様々な姿をしており、記述は難しいでしょうね。
学名記述では klinkerianus、烏城丸、ポラスキー、牙城丸 は疣基部の形と表皮色で見分けるように云われていますが、しっくりしません。
謎のままで良いような気もします。
ポラスキー輸入球(klinkerianusに似ている) | ポラスキー輸入球 中央部の親は萎縮した |
SB269 身割れした苗 |
k1813 polaskii v. La bonita | k8948 polaskii v. Pastoriza | k1802 polaskii v. Rafugio |
牙城丸群
烏城丸に似ています。苗を一本だけ見せて「これなんだ?」と言われれば間違う事があるくらい似ています。典型的な特徴で言えば 烏城丸より刺が長くてカールしており、ピンクで毛羽立った雌しべを持っている等
でしょうか。
<略字>
DS****** → Cactus Hobby Brno のカタログ番号
k***** → Kohresのカタログ番号
m**** → Mesa gardenのカタログ番号
変種とされている種は;
Dr Arroyo (k 1810) 自生地:Doctor Arroyo, Matehuala, SLP
Estella (k4553) 自生地:不明 女の人の名前みたいだけど?
frailensis (DS411361 field#MK90.295) 自生地:South-South West of Matehuala,
SLP
kupcakii (DS411363 field#TCG3002) 自生地:San Antonio de Los Castellos SLP
Las Palmas (m1291.4) 自生地:Las Palmas, SLP
longispinus (DS011358 BO494) 自生地:Municipio Guadalcazar SLP
牙城丸 macrochele | 牙城丸(雌蕊に特徴) | 牙城丸 macrochele |
k1810 var. Dr Arroyo | k4553 var. Estella | MK90.295 var. frailensis |
TCG3002 var. kupcakii | m1291.4 Las Palmas SLP | BO494 var. longispinus |